自分の成長の遅さが、イヤになる。
子どもだとバカにされる。
どんなに強くなっても、
何をしても、
この距離は埋められない。
【二人の時間】
知らなかった。
と言うか、教えて貰うことすら思いつかなかった。
また一つ、差が開く。
また一つ・・・もやもやが増えた。
「イライラする…」
窓の外を眺めれば、野球部がボールを追っかけているのが目に入った。
「委員長?」
視線を室内に戻すと、腰を上げた。
「草壁、後は任せたよ」
「はいっ!」
委員会の後今日の日報を書くことを止めて、帰宅することにした。
朝からイライラして落ち着かない。
委員会でも、くだらない話ばかり。
時間が経てば経つほどイライラは募り、何に苛ついているのかさえ分からなくなってきていた。
それは朝のたわいのない話から始まった。
校門前。登校してくる一つの群れを見かけ、その会話に珍しく耳を傾けた。
「今日ディーノさんの誕生日だって言うから、山本んちでパーティーしようって、連絡したんだけど…ディーノさんの返事がまだなんだよね」
つぶやく様に言う草食動物。
「10代目、また山本んところっすか!?」
「いいんじゃねぇの? ツナは、寿司が好きだよな?」
「ディーノさんも、お寿司好きだって言っていたよね? だから、山本の提案に乗っかったんだよ、獄寺くん!」
白いマフラーを首に巻き、鼻の頭を赤くした草食動物は、僕の横を気づかず通り過ぎる。
「じゃあ今日は帰り、みんなで山本んところ、集合っすね!」
「うんっ! 楽しみだね~ あっ……プレゼントとケーキは、京子ちゃんとハルが用意してくれるって! 後、飾りは風太とビアンキがやっておくって言ってたから、そんなに俺たちがやることないかも知れないね?」
朝の冷たい空気の中、そこだけは陽だまりの様な暖かさがあるように見えた。
「あ……!?」
「??どうしたんすか、10代目?」
側を守る様に歩く獄寺隼人は、足を止めた草食動物に振り返る。
「ひ…雲雀さんっ! お、おはようございます!!」
「……おはよう。…相変わらず群れているみたいだね」
本当は強いはずのこの草食動物の沢田綱吉は、必ず周りに誰かが居た。
「10代目っ…なんでこんなヤツに声かけるんですかっ!!」
確かに……僕に気づかず目の前を通り過ぎていったくせに、戻ってくるのはどういうことだ?
だがそんな僕の気持ちに気づくはずなく、草食動物は僕の目を見て必死に口を開いた。
「あ……あのっ…今日、山本んちでディーノさんの誕生日パーティー開くんですけど、そ、そのっ……ひ、雲雀さんも来ませんか!?」
突拍子のない申し出に僕は少し驚いた。
「ディーノさんも喜ぶと思うし。あ、ほら…リング戦の後の打ち上げ会も、雲雀さん来てなかったし…」
僕が群れるのを嫌いだって知っていて、誘っているのだろうか?
「俺んちの寿司は、サイコーだぜ、雲雀!」
山本武は満面の笑みを向けてくる。
「おいっ…折角10代目がお声を掛けてくださっているんだ、なんとか言えっ!」
「ご…獄寺くんっ!!」
ケンカを売っているとしか思えない言動に、僕はトンファーを構える。
「さっさと行きなよ。チャイムが鳴るよ」
草食動物は、懐からボムを取り出す獄寺隼人を、必死に止めている。
「ひ…雲雀さんっ、すみませんっ……!!」
焦って僕と獄寺隼人の前に草食動物は割り込んだ
「コイツっ……果たすっ!!」
「ダメだよっ、獄寺くんっ!」
目をぎらつかせる獄寺隼人を睨み付けると、僕は腹の中に溜まったままの一番言いたかった言葉を選んで、草食動物に投げつけた。
「ねぇ、僕が行くと思ってるの?」
その言葉に目に見えて分かるように、草食動物は肩を落とした。
「そう…ですよね。……スミマセン、朝からうるさくして」
「分かっているならさっさと教室に入りなよ。チャイムが鳴っても昇降口にいたら、咬み殺すよ」
ビク付く草食動物を睨み、1歩前に踏み出した。
「このっ…!!」
「獄寺くんっ!」
門をくぐる生徒たちがだんだん足早になっていく中、この場所だけ異様な空気だった。
草食動物は頭を下げると獄寺隼人の背を押しながら、昇降口に向かう。だが山本武はその後をすぐには追わず、僕の肩に気安く手をかける。
「遅くなっても良いから、来いよ。…誕生日って祝ってくれる人間が多ければ多いほど、嬉しいもんだぜ?」
僕が肩に乗った手をふりほどく前に、寿司屋の息子は踵を返して、草食動物たちの後を追った。
その背中を見ながら、雲一つない空にチャイムの音が響き渡る。
なんで、朝からこんな気持ちになるんだろう。
ディーノが誕生日だから…それが何?
僕には関係ないことだ。
言葉にして、それが言えなかった。
ディーノの誕生日に向けて書いたモノですが、
間に合わなくてあえて挫折。。。
続きは近々上げる予定です。
エロナシです。
雲雀がディーノをどう意識していくのか書いてみたかった話ww
校正入って貰ってないので、誤字脱字は大目に見てください。