「えっ…!?」
見つかるなんて思ってなかったので、腕を引かれ抱きしめられて本当に驚いた。
自分をここまで探す人は今まで居なかったから。
ディーノの腕の中で動くことすら忘れてしまった。
胸に感じた痛みがキレイに消えている。
心臓が、どくどくと早鐘を打つように鳴り響き、呼吸すらままならない。
「恭弥…なんで逃げるんだよ?」
ずっと雲雀を抱きしめたままホッとしたようにディーノは溜息をつくが、まだ息が荒い。
「ちょっ…苦しい。離せっ!」
トンファーでそのアゴを下からグイグイ突き上げるが、雲雀の背中に回された腕は緩むことがなかった。
「いてぇって、恭弥。なんで抱きしめちゃいけねぇんだよ?」
「暑苦しいよ!それにっ…会いたくない人と会って、抱きしめられて喜ぶ人間がどこにいるのっ!?」
憎まれ口を叩いた。
素直になろうと、あれ程思っていたのに会ってすぐそんな事は頭の中から消えた。
「普通に会って嬉しかったら、抱きしめるだろ?」
ディーノは外人だからなのだろうか、スキンシップを好む。良く沢田綱吉にも抱きついたりしていた。
それを自分にもする辺り、怖いモノ知らずだと思う。
「だからっ、人の話聞いてるのっ!?」
なんで離れないんだ。人の気も知らないで…。
こんなの、拷問よりも酷い。
押し問答を繰り広げている中、ディーノの後ろで聞き覚えのある声がした。
「雲雀みつかったのか?」
「あ、ディーノさんっ!」
「いたんですかぁ~?」
狭いビルの入り口に、草食動物たちがこぞって入ってくる。
「なっ…なんでっ!?」
ボンゴレファミリーが雁首を揃えて、ディーノに抱きしめられている雲雀を覗き込む。
「あ、ホントに私服ですねっ!」
「恭弥兄、似合ってるよっ!」
揃いも揃って、口々に雲雀の服装を珍しいと眺める。
ブチッ…――――
雲雀の中で、何かが切れた。
そしてその切れた音と共に、破壊音がビルの中に響き渡る。
――――ドゴンッ!!
「げっ!?」
即座にディーノはその攻撃を避け、ツナたちをかばう形で雲雀と対峙する。
「僕の前で群れるとは、良い度胸だね。ご褒美に一人ずつ咬み殺して上げるよ」
「まっ…」
ディーノが止める間もなく咬み付きにかかる。
「うわーーーっ!」
「きゃっ!」
ハルや京子の悲鳴に、ツナが二人をビルの外に庇うように連れて出た。
「雲雀っ、てめぇっ!」
獄寺隼人がボムを手に雲雀に飛びかかった。が、トンファーがうなりを上げすべて真っ二つにする。
「スモーキーボムっ…下がってろっ!」
「獄寺っ!」
後ろから腕を引くように、山本が狭いビルから獄寺を連れ出す。
こんな所でボムなんか投げたら、それこそ大騒ぎになりかねない。
「最初に咬み殺すのは、どうやらあなたのようだね?」
「恭弥っ、こんな所でやめろっ!」
唸りを上げ迫ってクルトンファーを、すんでの所でディーノは避け、狭いビルの壁に強かに背中をぶつけた。
「遅いよ」
追いつめたエモノを取り逃がさないとばかりに、雲雀のエモノが鈍く光空を切った。
――――ガツッ!
鈍い音がトンファーの勢いを殺した。
「ちっ」
ディーノの鞭によって、容易く受け止められたのをもう片方のトンファーで薙ぎ払う。
それを百も承知で居たらしいディーノは、雲雀の隙をついてビルの外に躍り出た。
「ディーノさんっ!」
外では何事かと人が集まりだしてきていて、それを獄寺や山本が何でもないように追い払ってはいるが、飛び出てきてディーノの姿が尋常ではないことに誰もが気づいた。
「恭弥っ!ここじゃ話になんねぇ。場所を変えようぜ」
その声に返事はない。
光が届かないビルの中にディーノはもう一度入っていくと、そこには紙袋が起き去られていた。
「ディーノさん。あの…雲雀さん…」
恐る恐る伺うツナにディーノは苦笑いを返した。
「悪りぃ。逃げられちまったみたいだな」
「ボス、情けねぇな。仮にも、この前まで家庭教師だったんだろ?」
ロマーリオは呆れながらも雲雀が置き忘れた紙袋を拾い上げる。
「ロマ、それは…」
「恭弥の買った物らしいな」
ディーノは肩を竦めると、
「俺が渡しに行くよ。その序でに話してみる」
「良いんですか!?」
ツナは申し訳なさそうに、その紙袋を見た。
「ああ…ちゃんとイタリアに帰る前に話をしなかった俺も悪いからな」
何のことか分からずツナは首を傾げた。
「ツナ、先に山本たちと行ってろよ。ロマ…悪りぃが車廻してくれ」
「イエス、ボス」
ツナが渋々と言った感じで、獄寺たちと立ち去って行く姿を、ディーノは見送った。
「……恭弥、出てこいよ。話をしようぜ」
誰も居ないはずのビルの中に向かって、ディーノは声を掛けた。
すると、奥の方に人影が通り過ぎる。
どうやら裏の方から外に出たらしい。
ディーノはゆっくりとした足取りで、その後を追った。
続く
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